世の中たくさんの数学書が出版されています。特に線形代数や微積分などはさまざまな分野で使われるそうで、本屋に行くと数学科向けのものから一般向けのものまでたくさん並んでいるのが分かります。この数学科向けと、一般向けの大きな違いがあるとすれば、1つは厳密性にあるとある思います。例えば微積分の教科書であれば、極限を定義するのか、それとも高校のような直感的な説明で終わるのか、といった具合です。
これは私個人的な意見かもしれませんが、数学書における直感的という言葉は難しい立ち位置にある言葉だと思います。上で挙げた極限の定義のように直感的という言葉を使って、必要な議論を省いているのではないかという懸念もありますし、逆に数学に精通している多くの人たちは数学的概念を、ただの記号の羅列ではなくて、より実在感のあるものだと捉えているはずです。ですから、数学を学ぶ上で直感というのは大切なんですが、それだけだと不十分なのです。
射影空間という概念があります。これはまったく抽象的で、直接絵に描くのは難しいです。しかし、そうじゃない対象もたくさんあります。たとえば、位相空間の部分集合を1点につぶして得られる空間や、2つの円を1点でつなげた8の字の図形などは簡単に想像できますし、絵に描くことだってできます。しかし、これらの概念は数学的には商空間として定義されるもので、元の空間や円とは別の世界のものとして現れるのです。ですから、概念としてはとても単純なはずなのに、数学的に扱おうとすると少し手間がかかってしまうのです。ですが、多くの場合直感を頼りにして抽象的な数学の議論の手がかりを手に入れることになります。
直感というのは数学をする上でとても重要なものになります。数学は論理的に理論を展開するわけですが、それは直感を捨てるということを意味しているわけではありません。むしろ、その直感の部分に数学の面白さが隠れているような感じもするのです。

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