数学をするための基本事項 ~最もよく見る命題~

これまでに条件や命題についていろいろ解説してきました.この記事ではもっともよく見る命題の形について述べようと思います.

下の記事の続きです.

条件をつなぐ「ならば」

p(x),q(x)を条件とします.この2つを「\longrightarrow」で結んだp(x)\longrightarrow q(x)は条件でした.ですから,全称記号「\forall」を付けてあげれば命題となります.つまり

\forall x(p(x)\longrightarrow q(x))

という命題を考えることができます.

例でみる

例えば

p(x):「x4 の倍数である」

q(x):「x2 の倍数である」

として次のような命題を考えてみましょう:

「すべての整数xに対して「x4 の倍数である」ならば「「x2 の倍数である」」

この命題の真偽はどうなるでしょうか.数学をするための基本事項 ~条件について~でも述べたのですが,全称命題はすべての実数を条件に代入してできた命題を「かつ」で結んだような命題でした.例えばp(x)\longrightarrow q(x)という「条件」にx=3を代入したp(3)\longrightarrow q(3)という命題を考えてみましょう.ここで34の倍数ではないので,p(x)は偽となります.「\longrightarrow」で結ばれた命題の真偽表を思い出せば,仮定が偽であれば結論の真偽にかかわらず,真となるのでした.ですから,この場合p(3)\longrightarrow q(3)は真の命題となります.それではx=8を代入してみるとどうなるでしょうか。このときp(8)\longrightarrow q(8)という命題が得られます.この場合p(8)q(8)はどちらも真なのでp(8)\longrightarrow q(8)は真であることが分かります.

もちろん,これをすべての実数で試すことは不可能です.ですが,p(x)が偽となるようなxに対してはp(x)\longrightarrow q(x)はいつでも真となるので,私たちが本当に確かめるべきは,p(x)が真であるようなxを持ってくれば,q(x)が真となるのか偽となるのかです.そして,p(x)を真にするようなどんな整数xに対してもq(x)が真であれば

「すべての整数xに対して「x4 の倍数である」ならば「「x2 の倍数である」」

という命題は真ですし,p(x)を満たすようなxq(x)を偽とするようなものが存在すれば,この命題は偽となるのです.

それでは実際にこの命題の真偽を確かめてみましょう.上でも述べたようにp(x)を満たさないようなxは考える必要がないので,p(x)を満たすようなxだけを考えることにします.すると,x4の倍数ですから,もちろん2の倍数(偶数)でもあります.これはすなわちp(x)を満たすようなxは必ずq(x)を満たすことを表しています.よって上の命題は真であることが分かります.

命題をつなぐ「ならば」の謎

ここで数学をするための基本事項 ~命題について~で述べた「ならば(\longrightarrow)」の真偽の定め方について復習してみましょう.真理表は次のような形でした:

pqp\longrightarrow q
TTT
TFF
FTT
FFT

これのおかしなところは仮定pが偽であるとき問答無用でp\rightarrow qは真であるところです.ですが,このように定めることにより

\forall x(p(x)\longrightarrow q(x))

という形の命題において,仮定のp(x)を満たさないようなxは考えなくてもよくなりました.この形の命題を作るためのつじつま合わせとして上の真理表はある,と理解しても問題ないのです.

記号と言葉

これまで述べてきた

「すべてのxに対してp(x)ならばq(x)

という形の命題は数学の理論の中でよく出てくる形です.ですから,いちいち「すべてのxに対して~」なんて述べていると大変です.多くの場合,この部分は省略されて単に

p(x)ならばq(x)

と書かれます.このことを記号として

p(x)\Longrightarrow q(x)

と書きます.つまり\forall x(p(x)\longrightarrow q(x))の略記として「\Longrightarrow」という記号を使うということです.ここで「\Longrightarrow」という記号を使いたかったので命題をつなぐ「ならば」は「\longrightarrow」という記号を使っていました.

p(x)\Longrightarrow q(x)が真であるとします.これが意味するのは,あるxp(x)を満たすとすると,自動的にxq(x)を満たすことを意味しています.つまり,あるxq(x)を満たすことを知りたければ,xp(x)を満たすことを確かめれば十分ということです.ここからp(x)q(x)の十分条件と言います.また,xp(x)を満たしていれば,自動的にxq(x)を満たすので,xp(x)を満たしているためには,少なくともq(x)を満たすことが必要です.ですからq(x)p(x)の必要条件と言います.

例1

本文に続いて

p(x):「x4 の倍数である」

q(x):「x2 の倍数である」

という条件を考える.q(x)\Longrightarrow p(x)の真偽を見てみる.まずこれが真であるとはどういうことかというと,xとして2の倍数を持ってきたときに,x4の倍数であるということである.しかし,すぐわかる通りこのことは正しくない.例えば,xとして6を取ってくれば,62の倍数だが,4の倍数ではない.つまり

q(6)\longrightarrow p(6)

は偽であるから,q(x)\Longrightarrow p(x)は偽である.

例1のようにp(x)\Longrightarrow q(x)という命題が偽であることを示すには,仮定p(x)は真であるが,結論q(x)は偽となるxを1つでも見つければよいのです.このようなxのことを反例と言います.

同値

p(x)\Longrightarrow q(x)q(x)\Longrightarrow p(x)がどちらも真であったとします.このとき,このp(x)q(x)は見た目は違うかもしれませんが,数学的にはまったく同じ内容を表していることになります.このことを記号で

p(x)\Longleftrightarrow q(x)

と表し,条件p(x),q(x)は同値であるといいます.また,p(x)\Longrightarrow q(x)q(x)\Longrightarrow p(x)がどちらも真であるということは,p(x)q(x)の十分条件でもあり,必要条件でもあるということです.もちろん,q(x)も同じようにp(x)の十分条件でもあり,必要条件でもあります.ですから,2つの条件が同値であることを,これらの条件は必要十分条件である,という言い方をしたりもします.

例2

p(x):「 x^2 - 3x + 2 = 0 である」

q(x):「 x = 1 または x = 2 である」

という条件を考えると,この2つの条件は同値である.

例2の条件p(x),q(x)は見た目としては異なりますが,xp(x)を満たすこととq(x)であることはまったく同じであることを表しています.

数学では同値な条件を考えることがよくあります.数学的な内容が同じなのであれば,どれか1つの条件だけ覚えておけばよいと思うかもしれませんが,実はそうではありません.2つの同値な条件があったとして,片方の条件は理論的にはすごく役立つけど実用的ではなくて,他方は理論的には使いにくいが実際に計算するときなどには重宝する,というような場合は多々あります.数学的な中身は同じなのですが,条件が役立つ場面というのは必ずしも一致しないのです.

まとめ

\Longrightarrow」という条件をつないで命題を作る記号を解説しました.

コメント

タイトルとURLをコピーしました