共通部分と和集合以外の集合の作り方として基本的なものとして,補集合というものがあります.それに関連して,何かと使うことになるであろう集合の差についても紹介しておこうと思います.
補集合
補集合とは
Uを集合,AをUの部分集合とします.次の集合をUにおけるAの補集合と言います:
\{x\in U\mid x\notin A\}
Aの補集合をA^cと書きます.この定義が意味することは,A^cはAに属さない元をすべて集めてきた集合であるということです.
ベン図で書くと次の色のついた部分がA^cを表しています.

A^cの定義から
x\in A^c \Longleftrightarrow x\notin A
が分かります.つまり,x\in A^cを示したければx\notin Aを示せばよいということです.
注意しないといけないのはAを部分集合として含む全体の集合が異なれば,A^cは変わってしまうということです.
\begin{gather*}U=\{1,2,3,4,5\} \\ V=\{0,2,4,6,8,10\}\end{gather*}
とする.A=\{2,4\}とすれば,A\subset U,A\subset Vである.
UにおけるAの補集合とは,Aに属さないUの元全体なので,Uから2と4を除いた
\{1,2,5\}
である.
一方VにおけるAの補集合は,Aに属さないVの元全体のなので,Vから2と4を除いた
\{0,6,8,10\}
である.
この例からAがどの集合の部分集合なのかによって,Aの補集合は変化してしまうことが分かります.なので,Aがどの集合の部分集合なのかは明示すべきことでしょう.しかしながら,数学では集合を最初から固定して,その中の部分集合や元を考えるということがよくあります.このような場合はAを含む集合は文脈から明らかなので,Aを含む集合を省略して,単にAの補集合と言ったりします.この固定された集合のことを全体集合と言ったりします.
補集合の基本的性質
次の性質は
x\in A^c\Longleftrightarrow \neg(x\in A)
よりすぐに分かります.
Uを集合として,Aをその部分集合とする.このとき次が成り立つ.
\begin{gather*}A\cup A^c=U \\ A\cap A^c=\emptyset\end{gather*}
証明
まずA\cup A^c=Uを示す.AとA^cはUの部分集合だからA\cup A^c\subset U(共通部分と和集合の命題13).逆の包含を示す.x\in Uとする.x\in Aとx\notin Aのどちらかは必ず成り立つ.x\notin Aは定義よりx\in A^cということであった.よってx\in A\cup A^cである.
次にA\cap A^c=\emptysetを示す.そのためにはx\in A\cap A^cとなるようなxが存在しなければよい.そこでx\in A\cap A^cとなるようなxが存在したとして矛盾を導く.x\in A\cap A^cは共通部分の定義よりx\in Aかつx\in A^cということである.x\in A^cはx\notin Aを意味するから,x\in Aとx\notin Aが同時に成り立っていることになる.これは矛盾である.よってA\cap A^cに属する元は存在しないから,A\cap A^c=\emptyset である.
さらに否定(\neg)の性質より2重否定は元に戻るので
x\in A\Longleftrightarrow \neg(\neg(x\in A))
が成り立ちます.\neg(x\in A)はx\in A^cということです.よって右側の条件は\neg(x\in A^c)を意味します.このことは補集合の定義から,xがA^cの補集合に属するということを意味するのでした.つまり
x\in A\Longleftrightarrow x\in (A^c)^c
ということです.(A^c)^cを単にA^{cc}と書くことにすれば次の等式が成り立ちます.
集合Uの部分集合Aに対して次が成り立つ.
A=A^{cc}
上で見たように,これは条件(命題)の2重否定が元の条件(命題)と一致することに対応する結果です.
補集合には集合の包含関係を逆転させる性質があります.
Uを集合として,A,BをUの部分集合とする.A\subset BならばB^c\subset A^cである.
証明
x\in B^cとする.x\in A^cを示す.x\in Aとして矛盾を導く.仮定よりA\subset Bだからx\in Aならばx\in Bである.これはx\in B^cであることに矛盾する.よってx\in A^cである.
集合の差
集合の差とは
A,Bを集合とします.次の集合
\{x\in A\mid x\notin B\}
をAとBの差といい,A\setminus BやA-Bなどと書いて表します.つまり,A\setminus BはAに属していて,Bには属さないような元全体を集めた集合のことです.
A\setminus Bを図で表すと,次の色のついた部分になります.

集合の差を使って補集合を表現することができます.Uを集合,AをUの部分集合とすると,U\setminus AはAのUにおける補集合A^cのことです.
逆に補集合を使って,集合の差を表現することもできます.集合Uとその部分集合A,Bを考えます.x\in A\setminus Bであるとは,x\in Aかつx\notin Bということです.B^cをUにおけるBの補集合とすれば,x\notin Bとはx\in B^cということでした.よってx\in A\setminus Bはx\in Aかつx\in B^cということです.集合の共通部分を思い出せば,x\in Aかつx\in B^cはx\in A\cap B^cということでした.以上より
A\setminus B=A\cap B^c
であることが分かります.
\begin{gather*}A=\{5,6,7,8,9\}\\B=\{1,2,3,4,5\}\end{gather*}
とする.このときAに属する元の中で,Bに属さないのは5だけである.よって
A\setminus B=\{6,7,8,9\}
である.またBに属する元の中で,Aに属さないのも5だけであるから
B\setminus A=\{1,2,3,4\}
である.
この例から分かるように一般にはA\setminus B\neq B\setminus Aです.
集合の差の基本的性質
集合の”差”というぐらいですから,数の引き算に似た性質を持っています.
先に述べておくと,これから示す性質は
A\setminus B=A\cap B^c
という等式を使えば,簡単に済みます.この等式を念頭に置いて進みましょう.
小さい集合から大きい集合を引けば,空集合になります.
Uを集合として,A,BをUの部分集合とする.A\subset BならばA\setminus B=\emptysetである.
証明
A\setminus B=A \cap B^cである.A\subset BよりB^c\subset A^cである.よってA\cap B^c\subset A\cap A^cであり,右辺は空集合である.これよりA\setminus B\subset \emptysetだからA\setminus B=\emptysetである.
集合についての命題6より空集合はどんな集合にも含まれているので,Aを集合とするとこの命題より\emptyset\setminus A=\emptysetであることが分かります.
空集合は空っぽの集合ですから,空集合を引いても集合は変化しません.
Uを集合としてAをUの部分集合とするとA\setminus \emptyset =Aである.
証明
A\setminus\emptyset=A\cap\emptyset^cである.\emptyset^c=Uであるから右辺はA\cap Uである.仮定よりA\subset Uだから共通部分と和集合の命題3よりA\cap U=Aである.よってA\setminus \emptyset =Aである.
まとめ
補集合と集合の差について,基本的なことを述べました.
参考書
集合・位相入門 (松坂和夫 数学入門シリーズ 1)(松坂和夫著):https://link.amazon/B04kDqQmT
集合と位相 第2版 (8) (大学数学の入門 8)(斎藤毅著):https://link.amazon/B05Fi5xiU
今回の内容は,あまり紙面を使って説明されることじゃないかもしれません.その理由としては,多くの場合,ほとんど明らかなことばかりだからだと思います.この記事のレベルの内容は,必要になったときに自分で導けるようになるべきでしょう.

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