共通部分と和集合

2つの数があれば,足し算や掛け算などの演算ができました.それと同じように,2つの集合があったとき,それらを使って新しい集合を作り出すことができます.その最も基本的な作り方を紹介します.ここで述べることは数学をしていれば空気のように使うようなものです.

共通部分

共通部分とは

Uを空でない集合として,A,BをUの部分集合とします.このとき,Aの元もありBの元でもあるようなUの元があるかもしれません.AとBの両方に含まれる元をすべて集めてきた集合をA\cap Bと書いてAとBの共通部分と言ったりします.つまり

A\cap B=\{x\in U\mid x\in A\wedge x\in B\}

ということです.もちろん,AとB両方に属している元がなければ,A\cap B=\emptysetとなります.このときAとBは交わらないとか,互いに素であるとか,非交差とか言います.A\cap B\neq \emptysetであるときAとBは交わるなどと言います.

ベン図を使えば,次のように表すことができます.

色のついた部分がA\cap Bを表しています.

例1

\begin{gather*}A=\{2,4,6,8,10,12,14,16,18,20\}\\ B=\{3,6,9,12,15,18\}\end{gather*}

とすると

A\cap B=\{6, 12,18\}

である.

共通部分の基本的性質

例1を見れば分かると思いますが,一般に集合AとBに対してA\cap BはA,Bよりも小さい集合になります(正確には大きくない集合となります.).つまり,次のことが成り立ちます.

命題2

AとBを集合とすると,次が成り立つ:

\begin{gather*}A\cap B\subset A\\ A\cap B\subset B\end{gather*}

証明

まずA\cap B\subset Aを示す.そのためにはx\in A\cap Bならばx\in Aであることを示せばよい.x\in A\cap Bとすると,その定義よりxはAとBの両方に含まれている.よってx\in Aである.A\cap B\subset Bも同様でx\in A\cap Bなら,xはAとBの両方に含まれているから,x\in Bである.

特にA\subset Bという状況を考えてみましょう.このときx\in Aであればx\in Bが成り立っています.つまり,x\in AであればxはAの元もあり,Bの元でもあるのでx\in A\cap Bとなります.これはA\subset A\cap Bであることを意味しています.命題2よりA\cap B\subset Aは成り立っているので,A\cap B=Aであることが分かりました.

命題3

A,Bを集合とする.A\subset Bが成り立っているならばA\cap B=Aである.

特にA=Bとすれば次を得ます.

系4

Aを集合とすると,A\cap A=Aである.

x\in B\cap Aであるとは

x\in B \wedge x\in A

ということです.もちろんこの条件はx\in A\cap Bであることに同値です.よって次のことが示されました.

命題5

A,Bを集合とすると,A\cap B=B\cap Aである.

A\cap Bという集合についてもう少し調べてみましょう.いまCという別の集合を持ってきたときに,この集合CがAとBの両方に含まれているとします.C\subset Aですから,Cの元xはAの元もあります.同様にしてC\subset Bですから,xはBの元もあります.つまり

x\in A\cap B

ということです.xはCのどの元でもよいので,このことはC\subset A\cap Bであることを意味しています.この逆も成り立ちます.

命題6

Uを集合とする.A,B,CをUの部分集合とする.このとき次の条件は同値:

  1. C\subset AかつC\subset B
  2. C\subset A\cap B
証明

1\Rightarrow 2は示した.2\Rightarrow 1を示す.命題2よりA\cap B\subset AかつA\cap B\subset Bであるから,集合についての命題4より,C\subset AかつC\subset Bが成り立つことが分かる.

命題2よりA\cap BはAの部分集合でもあり,Bの部分集合でもあることが分かりました.さらに命題3からはAとB両方の部分集合は,A\cap Bの部分集合であることが分かります.つまり,A\cap BはAとBに含まれる部分集合のうちで最大の部分集合である,ということです.

ここまでは2つの集合の共通部分について考えてきました.それでは3つ以上の集合の共通部分はどうなるでしょうか.自然に考えれば次のように定義すればいいような気がします.

まずA,B,Cという3つの集合のうち,2つの集合の共通部分を作り,その共通部分と残りの集合の共通部分を作る,という方法です.例えば,まずA\cap Bという集合を作り,次にA\cap BとCの共通部分である(A\cap B)\cap Cを作るということです.ですが,先にB\cap Cを作り,それからA\cap (B\cap C)を作るという順番もあります.注意しないといけないのは,この作り方の順番によらないということです.つまり

(A\cap B)\cap C=A\cap (B\cap C)

が成り立つことは確認しないといけないということです.確認しなければならないといいましたが,今回の場合はx\in(A\cap B)\cap Cであることとx\in A\cap (B\cap C)はどちらも

x\in A\wedge x\in B\wedge x\in C

に同値です.よって,このことから(A\cap B)\cap C=A\cap (B\cap C)が分かります.

命題7

Uを集合とする.A,B,CをUの部分集合とすると

(A\cap B)\cap C=A\cap (B\cap C)

が成り立つ.

この命題によりカッコを省いて

A\cap B\cap C

と書いていいことになります.同じようにして,より一般にn個の集合A_1,A_2,\dots,A_nに対して

A_1\cap A_2\cap \dots\cap A_n

を考えることができます.

2つの集合の共通部分の話に戻ります.

空集合との共通部分はいつでも空集合になります.

命題8

Aを集合とすると,A\cap\emptyset=\emptysetである.

証明

A\cap \emptyset=\emptysetであるとはA\cap \emptysetが元を持たないということである.そこでx\in A\cap\emptysetが存在するとして,矛盾を導く.x\in A\cap \emptysetであるとは定義よりx\in Aかつx\in \emptysetということである.しかし,空集合は元を含まないのでx\in \emptysetは矛盾である.よってA\cap \emptyset=\emptysetである.

部分集合と共通部分の関係は次のようになります.

命題9

A,B,Cを集合とする.A\subset BならばA\cap C\subset B\cap Cである.

証明

x\in A\cap Cとする.これはx\in Aかつx\in Cということである.A\subset Bだからx\in Bであることが分かる.よってx\in Bかつx\in Cが成り立つから, x\in B\cap Cである.

和集合

和集合とは

次に2つの集合の和集合というものを考えます.Uを集合としてA,BをUの部分集合とします.和集合は2つの集合AとBの少なくと一方に含まれる元をすべて集めてきた集合です.つまりAとBの和集合とは次のような集合のことです:

\{x\in U\mid x\in A\vee x\in B\}.

この集合をA\cup Bと書いて表します.定義から

x\in A\cup B\Longleftrightarrow x\in A\vee x\in B

です.

和集合もベン図で表すとその状況が分かりやすいです.

これも色のついた部分がA\cup Bを表しています.

例10

\begin{gather*}A=\{2,4,6,8,10\}\\ B=\{2,3,5,7\}\end{gather*}

とする.このとき

A\cup B=\{2,3,4,5,6,7,8,10\}

である.

和集合の基本的性質

この例からも分かるように,一般にA\cup BはAとBよりも大きい集合になります(正確には小さくない集合になります).

命題11

A,Bを集合とすると次が成り立つ:

\begin{gather*}A\subset A\cup B\\ B\subset A\cup B\end{gather*}

証明

まずA\subset A\cup Bを示す.x\in Aとすると

x\in A\vee x\in B

は成り立つ.よってx\in A\cup Bである.B\subset A\cup Bも全く同じように示せる.

A\cup BはA\subset Bという条件の下では簡単に表せます.x\in A\cup Bであるとは,xはAかBの元ということでした.x\in Aの場合はA\subset Bという条件を考えているので,自動的にxはBの元にもなります.つまりA\subset Bのときはx\in A\cup Bならばx\in Bであるということです.命題9からB\subset A\cup Bも成り立つのでA\cup B=Bであることが分かります.

命題12

A,Bを集合とする.A\subset BならばA\cup B=Bである.

特にA=Bとすれば次が分かります.

系13

集合Aに対して,A\cup A=Aである.

x\in B\cup Aであるとは

x\in B\vee x\in A

ということでした.これはx\in A\cup Bであることと同値ですから次が分かります.

命題14

集合A,Bに対してA\cup B=B\cup Aが成り立つ.

ここまで来るとA\cap Bとの対比が見えてくると思います.命題4に対応するA\cup Bの主張は次のように述べられるでしょう.

命題15

Uを集合とする.A,B,CをUの部分集合とする.このとき次の条件は同値:

  1. A\subset CかつB\subset C
  2. A\cup B\subset C
証明

まず1ならば2を示す.そのためにはx\in A\cup Bならばx\in Cを示せばよい.x\in A\cup Bとすると,xはAかBの少なくとも一方に含まれる.どちらにせよ1の条件よりx\in Cであることが分かる.これが示すべきことだった.

次に2ならば1を示す.A\subset A\cup Bと2の条件から A\cup B\subset CであることよりA\subset Cが分かる.B\subset Cも全く同様.

命題9と命題13から,A\cup BはAとBを含む最小の集合であることが分かります.

A\cup Bを複数の集合に対して定義します.そのために次の命題を用意しておきましょう.

命題16

Uを集合とする.A,B,CをUの部分集合とすると

(A\cup B)\cup C=A\cup (B\cup C)

が成り立つ.

証明

x\in (A\cup B)\cup Cであることは

x\in A\vee x\in B\vee x\in C

ということであり,これはx\in A\cup (B\cup C)ということでもある.よって(A\cup B)\cup C=A\cup (B\cup C)である.

この命題よりカッコを省いてA\cup B\cup Cと書いても問題ないことが分かります.このようにして3つの集合に対する和集合を定義することができます.4つの集合A,B,C,Dに対してはA\cup B\cup CとDの和集合をA,B,C,Dの和集合として定義します.n個の集合A_1,A_2,\dots, A_nの和集合

A_1\cup A_2\dots \cup A_n

も同じようにして定義されます.

2つの集合の和集合の話に戻ります.

空集合は空っぽの集合ですから,空集合との和集合を考えても元の集合と変化しないはずです.

命題17

Aを集合とすると,A\cup \emptyset=\emptysetである.

証明

A\subset A\cup \emptysetであるから,A\cup\emptyset\subset Aを示せばよい.x\in A\cup\emptysetはx\in Aまたはx\in \emptysetということだが,x\in\emptysetは常に成り立たないので,x\in Aである.つまり,A\cup\emptyset\subset Aである.

部分集合との関係としては,和集合も共通部分と同じような関係を持っています.

命題18

A,B,Cを集合とする.A\subset BとするとA\cup C\subset B\cup Cである.

証明

x\in A\cup Cとする.これはx\in Aまたはx\in Cということである.A\subset Bだからx\in Bでもある.よってx\in B\cup Cである.

分配法則

これまでに集合の共通部分と和集合について別々に説明してきましたが,実際にはこれらが一緒に出てくることもよくあります.ですから,共通部分という演算と和集合という演算の間の関係を見ておくのは十分意義があるでしょう.

整数の足し算と掛け算は分配法則が成り立ちました.それと似たようなことが集合でも成り立ちます.

命題19

A,B,Cを集合とする.このとき,次の等式が成り立つ.

  1. (A\cap B)\cup C=(A\cup C)\cap(B\cup C)
  2. (A\cup B)\cap C=(A\cap C)\cup(B\cap C)
1の証明

集合の等式だから,(A\cap B)\cup C\subset(A\cup C)\cap(B\cup C)と(A\cup C)\cap(B\cup C)\subset (A\cap B)\cup Cを示せばよい.

まず(A\cap B)\cup C\subset(A\cup C)\cap(B\cup C)を示す.命題2よりA\cap B\subset Aであり,命題11よりA\subset A\cup Cである.よってA\cap B\subset A\cup Cである.まったく同様にしてA\cap B\subset B\cup Cであることも分かる.A\cap B\subset A\cup CかつA\cap B\subset B\cup Cが成り立っているから,命題6の1ならば2より

A\cap B\subset (A\cup C)\cap(B\cup C)

である.また,命題11よりC\subset A\cup CとC\subset B\cup Cである.これと命題6の1ならば2より

C\subset(A\cup C)\cap(B\cup C)

が分かる.以上より,A\cap B\subset (A\cup C)\cap(B\cup C)かつC\subset(A\cup C)\cap(B\cup C)が成り立っているから,命題15の1ならば2より(A\cap B)\cup C\subset(A\cup C)\cap(B\cup C)が成り立つ.

次に逆の包含(A\cup C)\cap(B\cup C)\subset (A\cap B)\cup Cを示す.x\in(A\cup C)\cap(B\cup C)ならばx\in (A\cap B)\cup Cが成り立つことを示せばよい.x\in (A\cup C)\cap(B\cup C)とすると,xはA\cup CとB\cup Cの両方に含まれる.x\in Cとx\notin Cの場合で場合分けして考える. x\in Cとすると,C\subset(A\cap B)\cup Cだからx\in(A\cap B)\cup Cである.x\notin Cの場合を考える.xはA\cup Cの元であり,Cには含まれないから,x\in Aでなければならない.同様にして,xはB\cup Cの元でもあるから,x\in Bである.よってxはAとBの両方に含まれるので,x\in A\cap Bであり,A\cap B\subset(A\cap B)\cup Cだからx\in(A\cap B)\cup Cである.よって,(A\cup C)\cap(B\cup C)\subset (A\cap B)\cup Cが成り立つ.

以上のことより(A\cap B)\cup C=(A\cup C)\cap(B\cup C)が示された.

2の証明

1の証明と流れはほとんど同じである.(A\cup B)\cap C\subset(A\cap C)\cup(B\cap C)と(A\cap C)\cup(B\cap C)\subset(A\cup B)\cap Cを示す.

まず(A\cup B)\cap C\subset(A\cap C)\cup(B\cap C)を示す.そのためにはx\in(A\cup B)\cap Cならばx\in (A\cap C)\cup(B\cap C)を示せばよい.x\in(A\cup B)\cap Cとすると,xはA\cup BとCの両方に含まれる.x\in A\cup BだからxはAかBのどちらかに含まれている.xがCに含まれていることに注意すれば,xがAに含まれるときはx\in A\cap Cであり,xがBに含まれるときはx\in B\cap Cである.よって,xはA\cap CとB\cap Cのどちらかに含まれるので,x\in(A\cap C)\cup(B\cap C)である.つまり(A\cup B)\cap C\subset(A\cap C)\cup(B\cap C)が示された.

次に逆の包含(A\cap C)\cup(B\cap C)\subset(A\cup B)\cap Cを示す.A\cap C\subset AかつA\subset A\cup Bより A\cap C\subset A\cup Bである.まったく同様にしてB\cap C\subset A\cup Bも分かる.命題15の1ならば2より

(A\cap C)\cup(B\cap C)\subset A\cup B

である.またA\cap C\subset CかつB\cap C\subset Cでもあるから,再び命題15の1ならば2より

(A\cap C)\cup(B\cap C)\subset C

である.以上より,(A\cap C)\cup(B\cap C)\subset A\cup Bと(A\cap C)\cup(B\cap C)\subset Cが成り立つから,命題6の1ならば2より(A\cap C)\cup(B\cap C)\subset(A\cup B)\cap Cが成り立つ.

以上より(A\cup B)\cap C=(A\cap C)\cup(B\cap C)が示された.

若干証明が長くなっていますが,やっていることはいたって単純なので,冷静に読めば難しくはないと思います.

まとめ

2つの集合があれば,その共通部分や和集合を考えることで新しい集合を作り出すことができます.

参考書

集合・位相入門 (松坂和夫 数学入門シリーズ 1)(松坂和夫著):https://link.amazon/B04kDqQmT

集合と位相 第2版 (8) (大学数学の入門 8)(斎藤毅著):https://link.amazon/B05Fi5xiU


今回の記事に関連する内容は,斎藤先生の「集合と位相」より,松坂先生の「集合・位相入門」のほうにいろいろ書いてあります.

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