数学をするための基本事項 ~否定のいろいろ~

これまでに命題や条件に関するいくつかの言葉を用意してきました.この記事では,命題の否定について調べていこうと思います.

この記事は次の記事を前提としています.

記号の導入

一つ記号を導入しておきます.2つの命題が論理的に同等である,すなわちp,qという2つの命題の真偽が完全に一致することを

p\longleftrightarrow q

と書くことにします.これはpqの真理表を見比べたときに,Tの横にはTが,Fの横にはFが並んでいるような状況を表します.このような状況であれば,例えばpの真偽を調べるのが難しいとなれば,その代わりにqの真偽を調べることによって,間接的にpの真偽を調べることができます.命題における「=」のようなものと思っとけばいいです.

二重否定

命題pの否定を\neg pと書いたことを思い出しましょう.それでは2回否定した\neg(\neg p)の真偽はどうなるでしょうか.\neg(\neg p)pの二重否定と言ったりします.これは簡単で,次のような真理表を書けば分かります:

p\neg p\neg(\neg p)
TFT
FTF

この真理表を見ると,pの真偽と\neg(\neg p)の真偽は完全に一致しています.よって,次のように書けます.

二重否定

p\longleftrightarrow \neg(\neg p)

これは直感的にも当たり前のように思える文です.「pではない」を否定して,「「pではない」ではない」ということは「pである」ということです.

絶対にありえないこと

今までに命題をつなぐ記号や,全称記号\forall,存在記号\existなどを紹介してきました.それではこれらを組み合わせるとどのような真偽を持つ命題が出来上がるでしょうか.

pを命題としましょう.まずp\wedge(\neg p)という命題の真偽を見てみます.真理表を書けば次のようになります:

p\neg pp\wedge(\neg p)
TFF
FTF

つまりp\wedge(\neg p)という命題はpの真偽にかかわらず,必ず偽となります.このことは確かめるまでもなく当たり前と思っていた人もいると思います.これが意味しているのは,pという命題と\neg pという命題は同時に真にはならないということです.

ド・モルガンの法則

p,qを命題とします.

ド・モルガンの法則①

まずp\wedge qの否定\neg(p\wedge q)について調べてみましょう.これは次のように真理表を書くことができます:

pqp\wedge q\neg(p\wedge q)
TTTF
TFFT
FTFT
FFFT

また少し天下り的ですが(\neg p)\vee(\neg q)という命題の真偽は次のようになります:

pq\neg p\neg q(\neg p)\vee(\neg q)
TTFFF
TFFTT
FTTFT
FFTTT

2つの表を見比べてみてください.そうすると\neg(p\wedge q)(\neg p)\vee(\neg q)の真偽が完全に一致していることがわかります.すなわち

\neg(p\wedge q)\longleftrightarrow ((\neg p)\vee(\neg q))

となります.

「または(\vee)」の場合はどうなるでしょうか.p\vee qの否定\neg(p\vee q)の真偽は次のようになります:

pqp\vee q\neg(p\vee q)
TTTF
TFTF
FTTF
FFFT

それでは(\neg p)\wedge(\neg q)の真偽はどうなるでしょうか:

pq\neg p\neg q(\neg p)\wedge(\neg q)
TTFFF
TFFTF
FTTFF
FFTTT

上の2つの真理表を見比べれば,\neg(p\vee q)の真偽と(\neg p)\wedge(\neg q)の真偽は完全に一致していることが分かります.つまり

\neg(p\vee q)\longleftrightarrow ((\neg p)\wedge(\neg q))

ということです.

これら2つの関係には名前がついていて,ド・モルガンの法則といいます.

ド・モルガンの法則①

\neg(p\wedge q)\longleftrightarrow ((\neg p)\vee(\neg q))
\neg(p\vee q)\longleftrightarrow ((\neg p)\wedge(\neg q))

ド・モルガンの法則②

p(x)を条件とします.\forall x(p(x))の否定を考えてみましょう.これは難しくなくて,すべてのxに対してp(x)が真ではないということは,あるxに対してp(x)が偽であるということです.p(x)が偽であるということは\neg p(x)が真であるということです.つまり\forall x(p(x))の否定は,「\neg p(x)を真とするようなxが存在する」ということです.これを記号で書けば

\neg(\forall x(p(x)))\longleftrightarrow \exist x(\neg p(x))

となります.

存在命題の場合はどうでしょうか.\exist x(p(x))の否定は「p(x)を満たすようなxは存在しない」ということです.つまり,どんなxを持ってきたとしても,p(x)は偽となります.これを言い換えれば「どんなxに対しても\neg p(x)は真である」となります.記号で書けば

\neg(\exist x(p(x)))\longleftrightarrow \forall x(\neg p(x))

となります.これらの関係もド・モルガンの法則といいます.

ド・モルガンの法則②

\neg(\forall x(p(x)))\longleftrightarrow \exist x(\neg p(x))
\neg(\exist x(p(x)))\longleftrightarrow \forall x(\neg p(x))

\forall x(p(x))\exist x(p(x))は,それぞれたくさんの命題を「かつ(\wedge)」,「または(\vee)」で結んだような命題だったので,この結果は上のド・モルガンの法則①と同じような内容であることが分かると思います.

「ならば」の否定

p,qを命題とします.命題p\longrightarrow qの否定\neg(p\longrightarrow q)の真偽を調べてみましょう:

pqp\longrightarrow q\neg(p\longrightarrow q)
TTTF
TFFT
FTTF
FFTF

実はこれはp\wedge (\neg q)という命題と同じ真偽をしています:

pq\neg qp\wedge (\neg q)
TTFF
TFTT
FTFF
FFTF

記号で書けば

(\neg(p\longrightarrow q))\longleftrightarrow (p\wedge (\neg q))

括弧と矢印が多いので見づらいですが,これまでに説明したことを記号で書いただけです.このことを使ってp(x)\Longrightarrow q(x)の否定を考えようと思います.

p(x),q(x)を条件とします.命題p(x)\Longrightarrow q(x)の否定を考えます.実はこれまでやってきたことを組み合わせれば,機械的に出てきます.まずp(x)\Longrightarrow q(x)\forall x(p\longrightarrow q)という意味でした.ですからド・モルガンの法則②を使えば\forall x(p(x)\longrightarrow q(x))の否定は

\exist x(\neg(p(x)\longrightarrow q(x)))

になります.そして,\neg(p(x)\longrightarrow q(x))p(x)\wedge (\neg q(x)) と同等であることは直前に示していました.このことから上の命題は

\exist x(p(x)\wedge (\neg q(x)))

と同等であることが分かります.これがp(x)\Longrightarrow q(x)の否定となります.

\Longrightarrowの否定

\neg(p(x)\Longrightarrow q(x))\longleftrightarrow \exist x(p(x)\wedge (\neg q(x))

p(x)\Longrightarrow q(x)の否定を機械的に計算してみたのですが,この結果は当たり前っちゃ当たり前です.そのわけを説明します.p(x)\Longrightarrow q(x)は「p(x)を満たすすべてのxq(x)を満たす」ということでした.これが成り立たないということは,p(x)を満たすようなxの中にq(x)を満たさないようなものがある,ということです.もう少しきちんと述べると

「あるxp(x)を満たし,かつq(x)を満たさない」

q(x)を満たさないというのは\neg q(x)を満たすということですから,記号を使って書けば

\exist x(p(x)\wedge (\neg q(x)))

が真であるということになります.これは上で機械的に出した結果とまったく同じです.

例1

次の条件を考える:

p(x):「x2 の倍数である」

q(x):「x4 の倍数である」

p(x)\Longrightarrow q(x)の否定は,\exist x(p(x)\wedge (\neg q(x)))である.つまり

「あるx2の倍数だが,4の倍数ではないものが存在する.」

ということである.実際この命題は正しい.例えばx=6の場合を考えてみると,62の倍数だが,4の倍数ではないからである.よって\exist x(p(x)\wedge (\neg q(x)))は真だから,\neg(p(x)\Longrightarrow q(x))は真である.これより,p(x)\Longrightarrow q(x)は偽であることが分かる.

この例は数学をするための基本事項 ~最もよく見る命題~の例1とまったく同じことをしていることに気付くと思います.

まとめ

今回の記事では命題の否定について基本的なことを解説してみました.

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