数学をするための基本事項 ~命題について~

数学を学ぶ上で最低限持っておくべき知識について解説します.

命題とは

命題とは数学的な主張のことを言います.命題には真の命題と偽の命題があります.簡単に言えば,真とは正しいという意味で,偽とは正しくないという意味です.次の例を見てみましょう.

例1

42の倍数である.

例2

3は偶数である.

例1は真の命題で例2は偽の命題です.

注意としては,次のように数学的に正しいか正しくないかを判断できない主張は命題とはみなせません.

例3

数学は世界で一番面白い学問である.

命題のほかに定理,補題,系という言葉が使われることもあるのですが,すべて意味は同じです.なぜいろいろな表現があるのかというと,その命題がその理論におけるどのような立場にあるかを表すためだと思います.要するにその文章を書いている人の気分です.定理は命題の中でも重要なもの,補題はほかの定理などを証明する際に使われる主張のこと,系とはほかの命題から即座に得られるようなもの,という具合の認識で大丈夫でしょう.

いくつかの命題を組み合わせて,新しい命題を作り出すことができます.そのことを説明するために真理表というものを先に説明します.pを命題とします.このとき,命題pの真偽を次のように表で表します.この表を真理表と言います.

p
T
F

表中のTは真(true),Fは偽(false)を表します.このままだとあまり面白みのない表ですが,この表を使って命題の「演算」を定義しようと思います.

否定

pを命題とします.このとき「pでない」という命題を作り出せます.これはpの否定と言い,\neg pと書きます.\neg ppの真偽によって次のような真偽を持ちます:

p\neg p
TF
FT

この表の見方は,表を横に見比べてpが真のとき\neg pは偽,pが偽のとき\neg pは真であることを表しています.

例4

105の倍数である」という命題の否定は「105の倍数ではない」という命題で,もとの命題が真なのでそれを否定した命題は偽である.

例5

3は偶数である」という命題の否定は「3は偶数ではない(奇数である)」という命題で,もとの命題が偽なのでそれを否定した命題は真である.

それでは\neg pを否定した\neg(\neg p)(二重否定といいます.)という命題はどのような真偽を持つでしょうか.これは簡単で,次のように真理表を書けばよいです:

p\neg p\neg(\neg p)
TFT
FTF

この表を見るとpの真偽と\neg(\neg p)の真偽は完全に一致しています.ですから,命題の二重否定は元の命題に戻る,という事実が分かりました.

二重否定

p=\neg(\neg p)

「かつ」と「または」

次に2つの命題をつなげて新しい命題を作る方法を説明します.p,qを命題とします.このとき,「pかつq」という命題と「pまたはq」という命題を作り出すことができます.これらはそれぞれp\wedge qp\vee qと書きます.真偽は次のようになります:

pqp\wedge qp\vee q
TTTT
TFFT
FTFT
FFFF

いくつか例を見てみましょう.

例6

「「4は偶数である」かつ「43 より大きい」」という命題は,もとの2つの命題が真だから真である.

例7

「「4 は偶数である」かつ「45 より大きい」」という命題は,「45 より大きい」という命題が偽だから,偽である.

例8

「「4 は偶数である」または「45 より大きい」」という命題は,「4 は 偶数である」という命題が真だから,真である.

例9

「「4は偶数である」または「43 より大きい」」という命題は,もとの2つの命題が真だから真である.

日常的な「または」の感覚ではどちらか一方だけを選ぶ感覚があるので,例9のような命題は偽にしたくなるかもしれません.しかし,数学ではどちらも偽でない限りは「または」でつながれた命題は真になります.

「ならば」

最後に「pならばq」という命題を説明します(今まで通りp,qは命題です.).この命題を「p\rightarrow q」と書くことにします.pを仮定,qを結論ということがあります.真偽は次の真理表のとおりです:

pqp\rightarrow q
TTT
TFF
FTT
FFT

この表を見て,おや,と思った人もいるかもしれません.仮定pが真のときはいいのですが,偽のときは少し厄介です.仮定pが偽であれば問答無用でp\rightarrow qは真になります.ここが「ならば」を日常的に使うときとのギャップに感じられることが多いようです.ですが,これは後々こうしておくほうが都合がいい,ということで飲み込んでおいてください.これは一種の機械的な操作である,と理解しておいて大丈夫です.いくつかの例でみるようにp\rightarrow qという命題は,上の「かつ」や「または」に比べて,意味が解釈しづらい文章になることが多いです.

また,上で「pならばq」を記号で「p\rightarrow q」と書くとしましたが,「p\Rightarrow q」という記号ではないのか,と思った人もいるかもしれません.この記号\Rightarrowという記号はのちにまた別の意味で使いたいので,その区別のためにここでは\rightarrowを使うことにしています.

注意が長くなりましたが,例を見てみましょう.

例10

「「4は偶数である」ならば「43 より大きい」」という命題は,仮定も結論も真だから真である.

例11

「「4は偶数である」ならば「43 より小さい」」という命題は,仮定は真で結論は偽だから偽である.

例12

「「4は奇数である」ならば「43 より小さい」」という命題は,仮定は偽だから結論の真偽にかかわらず真である.

これらの例を見てみると,感じたかもしれませんが,そもそも文章の意味がよく分かりません.ですから,無理に「ならば」というものを日常的な感覚に落とし込む必要はありませんし,後々になって少し違う形で,それでいてここでやった「ならば」を使って,日常的な感覚に近い「ならば」が出くるので,安心してください.

まとめ

数学は多くの命題の集まりによって理論が構成されていきます.命題の基本的な部分を解説しました.

コメント

タイトルとURLをコピーしました